千夜一夜

人生は短い、それはまるでたった1日のように

ピーターラビットと、成長して丸くなるということ


ピーターラビット」を見たので感想です。頭使わない映画が大好き。
畑を守りたい人間と野菜を奪おうとする動物たちのコメディ、のつもりでいたら意外に成長物語だった。うさぎにそれほど興味がなくても楽しめる映画だと思います。むしろうさぎ好き〜って人は見たら夢が壊れちゃうんじゃないか、ってくらい。

 

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 映画『ピーターラビット』オフィシャルサイト | ソニー・ピクチャーズ

途中からネタバレありです、未見の方はご注意。

登場するのは、うさぎのピーターとその三つ子の妹、いとこのベンジャミン、その他たくさんの動物たち。
対する人間サイドを固めるのは頑固なマクレガーおじいさんとその隣人女性ビア、青年トーマス・マクレガーです。

 

両親を早くに亡くし、百貨店での仕事を完璧にこなすことを追求する青年トーマス。大叔父が亡くなったと知っても出世にしか関心がない。
身内びいきで出世した同僚に腹を立て店内で暴れたために職を失ったトーマスは、相続で得た田舎の土地へ向かう。動物たちと美しい女性との出会いを通して、次第に素直な心を取り戻していく…。

と表現すると感動しそうじゃないですか。いちおう間違いではない、ただちょっと野蛮な動物たちとのバトルが激しすぎるだけで。あと店内で暴れるなよ。

 

芸術とヨガ、動物を愛する女性ビアは一見善良な女性に思えましたが、話が進むにつれ「うさぎは完璧な生き物、悪いことをするはずがない」と主張するような危うげな一面を示してきます。
動物たちに畑や家をめちゃくちゃにされた、と訴えるトーマスに全く耳を貸さなかったり。一緒に見た連れはビアのことを「モンスターペアレント」と評していた。
トーマスに仕事への本当の目的を気付かせるシーンとか、好きだったんだけど。

終盤ピーターが「人間だって素直な心があればうさぎの声が聞こえるんだ」とトーマスに伝える場面があったじゃないですか。ビアとの会話シーンが最後までなかったのは、彼女が自分自身のうさぎ像に囚われすぎていて、ピーターたちもそれに甘んじていたからかな、という解釈です。

あのラストのあと、いずれは会話するようになるのかなあ。でもあの会話のシーンは男の友情って感じもする。エンドロールのアニメーションもそんな雰囲気だったような。言葉で伝えるのか無言で額を寄せるかっていう、ピーターが作ったそれぞれとの関係性の違いが現れていました。

 

ピーターをはじめとするうさぎ勢もそれぞれ「キャラクター」に囚われていた印象。自分を無鉄砲なヒーローだと主張して無茶な言動を繰り返すピーターとそのフォロー役を「しなければいけない」ベンジャミン、三つ子なのに長女の座を巡って争う三姉妹など。
家族にも敬語が出ちゃうモプシーちゃん可愛い。過激派って言葉がぴったりの末っ子カトプシーはいちばん自己を確立させて堂々としていたなぁ。あと、ピーターとベンジャミンのBL流行りそう……。
ピーターの口にしていた「キャラクター上の欠点」って言葉が指すキャラクターは、ピーター・ラビット原作上のキャラ性と共同生活してきた中で生まれた役割付けの両方を指すのかな。

 

それと炎上について。アレルギー持ちの登場人物にその食べ物で攻撃するシーンについて制作が謝罪したことは知っていたんだけど、実際に見たらやっぱり受け入れられない部分はありました。
既にバトルが殺し合いの様相を呈していたので、相手の弱点をついて応戦するのはわかる(わかるのもどうかと思うけど)。どちらかというと「これがだめって、言うことで気を引こうとしてさ!」って台詞が嫌だった〜。私もだいぶ軽度だけど卵アレルギー持ちなので周囲に気を使わせちゃったいろいろとか思い出してそんなことないのに〜〜ってなってしまった。幼かったらもっと本気で傷ついてたと思う。
「本当に大変な人もいるのは分かってるから、お手紙出さないでね!」って劇中で言ってたことにも引いてしまったし、そりゃあ抗議来るよなあって感じ。これ字幕版では違うニュアンスじゃなかったのでは?とも思うんだけど、どうなんだろう…。
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炎上したらしいね、って話を友人何人かにしたら結構な割合で「あー、原作と違いすぎて?」という反応だったのが面白かった。
原作といえば回想で水彩アニメーションに移行するシーンがあって、映画「ゴッホ最後の手紙」を連想しました。(ゴッホの絵柄を再現して彼の死後を描く油絵アニメーション映画で、回想シーンがモノクロの水彩画アニメになるのです。)
もともとピーターの父親がパイにされてしまっていたのが原作で、さらに母親もいなくなったあとの話がこの映画だったので、うさぎたちの両親との回想シーンは3Dで作らずあえて水彩アニメにしたんだと思う。
全編通してこの絵柄だったらもっと人気が出ていたんじゃないか、あるいは毒にも薬にもならない普通の子供向け映画になっていたのかな。


あとゴッホ最後の手紙との共通?点がもうひとつ。ゴッホの映画では主人公が完全に吹き替え担当の山田孝之に見えていたんだけど、今回はトーマスが思いっきり堺雅人でした。髪型とか表情とか話し方とか。吹き替えは浅沼晋太郎さんって声優さんなんだけど、それを吹き飛ばすほどの堺雅人パワーがあった。

アニメと実写と絵画のあいだ「ゴッホ〜最期の手紙〜」感想 - 千夜一夜

 

前評判で聞いていた破壊や爆発の勢いもありつつ、それぞれが思い込みやこだわりを乗り越えて成長する物語でした。あと映像ならではのコメディの瞬発力も楽しかった。感電して吹き飛ぶシーンとか。

それにしても売り家を買った夫婦は一方的に可哀想だった、ちょっと強気に出すぎた感はあるかもしれないけど、何も悪いことしてないのに…笑

親子でこれ見に行ったたくさんの家庭で、うさぎが謝るときの額をくっつけるポーズ流行ったらいいなあ。と思います。