映画「ゴッホ 最期の手紙」を新宿シネマカリテで見てきました。世界初の油絵アニメーション、とのあおりに惹かれてのチョイスです。
後半はストーリーの核心に触れるので、ご了承ください。
あらすじ
画家ヴィンセント・ヴァン・ゴッホの死から一年。青年アルマン・ルーランは、ヴィンセント(ゴッホ)の友人であった郵便局長の父から手紙を託される。それはヴィンセントが生前に出せなかったものだった。
手紙の受取人を探すべく、フランス各地で関係者を巡るアルマン。ヴィンセントが最期の日々を過ごした場所にたどり着き、画家の死の真相を探る旅となる。
と自力でまとめてみましたが、要はゴッホの友人の息子のロードムービーでした。画家をめぐる冒険。
不気味の谷の境目
人の動きを実写で撮影してから手描きで絵におこして、それらを合成して映像にしているそうです。本編は「この映画は100人の画家の絵によって作られました」とのメッセージで始まりました。
最初にあったスタッフロールは絵を担当した画家の方々の名前かな、と思います。前後にスタッフロールが入ったことにかなり驚いたのですが、洋画ではよくあるらしいですね。
回想シーンはモノトーンの水彩画でした。 タッチがリアルなので、一瞬モノクロの実写映像かと思ったほど。桶に入れた水に顔が写って、水に手を入れて水面が歪んで、また少しずつ反射したシーンが特に印象に残っています。
油絵も人物を精細に描いているので、動きがあるとかなり実写に近い感覚がしました。なんというか、景色は馴染みのある油絵なのに人物はフォトショップのイラスト加工を想像してしまうような。意外と服のしわはそれほど描き込んでないんだな、と発見もありました。
あとはポニョからアリエッティあたりのジブリ作品って背景と人物のタッチが違うじゃないですか、ああいう不思議な感覚。
絵画アニメーション、不気味の谷の境目を行き来するような体験でした。
アートサスペンス・ドキュメンタリー
ストーリーの主軸はヴィンセントの死の真相について。アート・サスペンスと銘打たれていましたが、史実沿いに作られていたと思います。明るくなった劇場で「もう一山あると思った〜」と話す声も聞こえました。
ガジェ医師がヴィンセントを撃ったのでは、と思って見ていたもののそういう展開でもなく。彼の「私は医師だが芸術家でもあるから、芸術家の苦悩がわかる」と断言していたあたりが個人的に怪しく感じてたので…。笑
先輩は「『藪の中』だった」と言っていました。突き詰めれば死人に口なし、遺された作品が全て。死の真相は、この映画の本筋ではなかったのと思います。
アルマンの父ジョゼフの「人生は、強い心もくじく。」の台詞や芸術家を志してパリに来たものの酒場で騒ぐ人々の様子など、気の沈む場面もあります。それでも画面の美しさと余韻の残るラストで、爽やかに劇場を出ることができました。
ラストシーンの後には、登場人物のその後が紹介されます。アルマンが再就職できていてほっとしました。改めて皆歴史に残っている人物だと実感。
作中では医師の娘マルグリットがあまり好きになれなかったのですが(ちょっと冷たく自意識過剰に思えて)、ヴィンセントに贈られた肖像画を傍らに生涯独身を貫いたと知って、なんだかぐっときました。
圧倒的山田孝之
吹き替えで主演のアルマン青年(ダグラス・ブース)を山田孝之さんがあてているのも楽しみのひとつでした。
もう顔とか背格好まで山田孝之に見えてきます。日本語版は絶対顔でキャスティングしたと思う。
(公式サイトより)
個人的には実質主演では?ってくらい山田孝之の印象が強かったので、ファンの方で見ていなければかなりおすすめです…。
吹き替えといえば、マルグリットの声をどこかで聞いたことあるなぁと思ってたら伊藤かな恵さんでした。はがないとか見てた。本編通して彼女だけアニメヒロイン感あります。
あとアルマンの父ジョゼフ役、笑福亭鶴瓶だ〜!怪盗グルーの予告編で見た!と思い込んでたけどイッセー尾形さんでした。違った。
新宿シネマカリテ
初シネマカリテでした、壁には上映作品のメディア露出を集めた手作りのボード。
上映前には係員さんが前に立ってアナウンスがありました。映写機で写しているので席の位置によっては立ち上がると映像を遮っちゃうよ、とのこと。
その後、予告編もノーモア映画泥棒もなく本編が始まりました。上映時間や作品によっては予告があるそうです。これまでシネコンにしか行ったことがなかったので、映画館ごと新鮮な体験でした。
美術は疎いのですが、高校の教科書レベルの知識でも何度かゴッホのあの絵の場面だ!見たことある!となりました。詳しいと絶対により楽しめたはず。
1/8までの上野のゴッホ展、行きたいです。
(2017.12.31)↓行ってきました!
【東京都美術館】ゴッホ展 巡りゆく日本の旅/現代の写実展 感想 - 千夜一夜