千夜一夜

人生は短い、それはまるでたった1日のように

「正しいデータ」を考える ジェンダーセッション参加レポ

本ページはプロモーションを含んでいます。

先日、立教大学で行われたジェンダーセッション第72回ジェンダーフォーラム『文科省・高校 「妊活」教材の嘘を読む』に参加しました。

西山千恵子・柘植あづみ両先生がメイン講師です。

 

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出典

http://www.rikkyo.ac.jp/research/institute/gender/

 

 

7月に生殖医療倫理についての授業でレポートを書いた際に、柘植先生の『妊娠を考える』を参考にさせていただいたため、あの柘植先生だ!と受講しました。

平易なやわらかい文章で、医療関係者や生殖医療の当事者である女性のインタビューが多数収録されています。 

妊娠を考える ―〈からだ〉をめぐるポリティクス (NTT出版ライブラリーレゾナント)

妊娠を考える ―〈からだ〉をめぐるポリティクス (NTT出版ライブラリーレゾナント)

 

 

約100人入る教室は三分の二ほど埋まり、そのうち半分以上が40〜50代の男女。学生と思われる20代はほとんど女子でした。

テーマは文部科学省が発行する高校生向けの副教材「健康な生活を送るために」。保健体育の授業で使われる、交通ルールや飲酒喫煙について書かれた冊子です。

そのうち性感染症や妊娠・出産に関する項で、2015年度版から2017年度版でのデータの更新について解説されました。

 

熱い90分ドラマ

「青春ドラマ 熱血!妊活学園高校  私の青春どうなるの!?編」とのスライドが映され、ブレザーの西山先生が登場。スクールバッグにはマスコットもついていた徹底振り、写真のないのが悔しいです。

高校一年生の保健体育で配布された副教材の「妊娠のしやすさは22歳がピーク」との記述に不安を抱く恵子さんに、養護教諭の柘植先生(白衣)が解説…という形でスタートしました。

 

この「22歳が妊娠しやすさのピーク」との情報が文科省によって公表された当時は「高齢出産のリスクは早めに教えるべき、やっと追いついた」といった意見と、データへ異議を唱える声の賛否両論があったそうです。


togetter.com

 

2015年度に掲載されたグラフは修正が入り、訂正票が発行されました。2017年発行の副読本では同データは削除されています。

 

  • 「妊娠のしやすさ」は本来数値化できない(実験できるものではない、また出典論文では専門用語)
  • 夫の年齢・夫婦の結婚年数といった要因を無視し、女性の年齢という一元的な面からのみ問題提起をしている

といった点での指摘も。

 

d.hatena.ne.jp

この問題は、「科学」というものの実態は、社会のなかの営みであり、政治的な駆け引きや時流に強く影響されたものであることを教えてくれます。

 

2015年の発行当時は高校三年であり、教材の配布もなく意識していませんでした。改めて22歳の今、正しいものとしてこの情報を突きつけられていればおそらく強い不安があっただろうと感じます。

 

13キロ以上太りすぎていると妊娠できない!?

その他にも、妊孕性(にんようせい=妊娠や出産)への知識が日本は下から二番目であり、トルコの次に低いという問題に関して、知識量の計測に使われた調査票の分析結果も解説されました。

調査票は問いに対して○か×、わからないのいずれかで回答する選択式のもの。

国際基準と日本婦人科学会の定める基準数値が異なり、国内では正しい回答が不正解にカウントされていたケースがありました。

また「女性は13キロ以上太りすぎていると妊娠できない」という◯×で回答しようのない翻訳ミス?があるなど、言語や基準の違いが加味されていないという指摘も。

 日本とトルコは、実際の知識量の多寡だけでなく英語圏外のため試験が不利になった側面もあるのではないか、という考察です。

 

変わる「正しさ」

 後半は参加者からの質問票へ両先生が回答するディスカッションに。

 

  • 男女雇用機会均等法の出始めは女性も働くべき、避妊をすべきとの言説が強調され高齢出産のリスクが教えられていなかった(40代女性)

→その時代は性教育へのバッシングが強かったことも影響しているのでは(西山先生)

  • 現在の「保健教育<少子化対策」ともいえる指導は、戦前の産めよ増やせよ思想による子ども政策に通ずるものがある
  • 文科省の教材をそのまま使うのが精一杯になっている教育現場の忙しさも問題

 

などの意見が上がっていました。

20代女性からの「女性が負担を強いられている」という意見に、西山先生が「日本で女性が生きるのは大変ですよね…」とため息をついた一幕も。

 

おわりに

 副読本の修正に声を上げ、共編著を出版した柘植あづみ先生と西山恵子先生は、25年の付き合いの中でも初の共著だったそうです。著者内でお互いのネットワークがつながり、たくさんの方に協力していただけた、と微笑みあっていたのが印象的です。

どんな情報にも、ミスや人為的な誘導が加わっている可能性もある。個人が違和感のアンテナを磨き、精査する必要性に気付かされました。

 

文科省/高校 「妊活」教材の嘘

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